歯科医院院長のブログ

【対談】年商1.3億円の歯科医院が考える「医療法人化」と「MS法人」の使い分け

【対談】年商1.3億円の歯科医院が考える「医療法人化」と「MS法人」の使い分け

2025年04月10日 20:35

【対談】年商1.3億円の歯科医院が考える「医療法人化」と「MS法人」の使い分け

登場人物:
開業医(Dr. S):開業5年目。年商1.3億円の個人事業主。MS法人はすでに設立済み。
コンサルタント(C):歯科医院の経営支援に特化した専門家。


第1章:医療法人化、そろそろ考えるべき?

C:
Dr. S、年商1.3億ということですが、医療法人化は検討されていますか?

Dr. S:
正直悩んでいます。節税になるというのは分かるんですが、今はまだ利益の上下もありまして…。(500万円から2000万円と振れ幅があり)

医師が休んだり、スタッフが多数産休に入ったり、目標通りにいかないことも多いですね。


まだ多くの減価償却費も損益計算書で計上できるので、利益は多くないんですよ。


C:
医療法人化の判断ポイントは主に4つです。

  • 税率(所得税55%→法人税30%)

  • 退職金積立などの資産形成(生命保険商品で為替リスクも兼ね備えた商品が多い)

  • 融資・信用力

  • 承継や分院計画

特に、毎年の利益が安定して1800万円以上なら節税インパクトが大きくなります

Dr. S:

でも一般的に決算書を見ていても売上が減ってくる医院も多いので今利益が多く残っていても15年後はどうなのッて思います、、


第2章:実際、どれくらい得するの?

Dr. S:
シミュレーションってありますか?

C:
ざっくりですが、こんな感じです。

項目法人化前法人化後(報酬1200万)所得税・住民税約800万円約300万円社会保険料0円約270万円法人税―約100万円節税効果―年間300~500万円程度


ただし、社会保険料の増加や法人設立費用もあるので、現金ベースで得するのは2~3年目以降になることが多いですね。


第3章:すでに持ってるMS法人、もっと活用できる?

Dr. S:
実は開業2年目からMS法人を持っています。医療機器リース、事務雇用、広告費、セミナー収益などで運用しています。

C:
すばらしいですね! まさに王道です。

現状の構造は…

  • 医療機器リース:月40万 → 年間480万円

  • セミナー収益:年間150万円

  • 事務員給与:月10万×3名 → 年間360万円

  • 広告・管理業務:MS法人側で支出

設立・運営コスト:

  • 登記・設立:30万円前後

  • 顧問料や維持費:年間20~30万円

この形なら、利益を法人内に貯めていけるし、家族への報酬分散も柔軟です。


第4章:「建物賃貸スキーム」は今からでもできる?

Dr. S:
建物は私が建てたものなんです。MS法人への賃貸って今からでもできますか?

C:
はい、「建物だけをMS法人に貸す」ことは可能です!

流れはこうです:

  1. Dr. S個人 → MS法人に建物を賃貸

  2. MS法人 → 医院に転貸

  3. 医院はMS法人へ家賃支払い → 経費に

  4. MS法人では減価償却を取って税負担を調整

月40万円の家賃なら、年間収入480万円に対し、減価償却(例:約176万円)を引いて…

→ 税引後利益:約228万円が残ります(法人税25%想定)


第5章:グループ全体で考える経営の最適化

C:
MS法人を持つことで、医院と法人の「2つの財布」でバランスを取ることができます。


第6章:医療法人化 vs MS法人の「今と未来」

Dr. S:
医療法人化したら、今のMS法人スキームはどうなるんですか?

C:
医療法人は「非営利」のため、利益の取り出しが難しいです。その分、退職金や役員報酬で調整します。

ただし、医療法人+MS法人の組み合わせはよくある形です。
ポイントは以下:

  • 医療法人は診療主体

  • MS法人は「管理・物販・資産保有」

あなたの場合、現時点では「個人医院+MS法人」が一番柔軟で使い勝手が良いですよ。


第7章:まとめと今後の展望

Dr. S:
法人化を焦るより、今あるMS法人をもっと活かせばいいということですね。

C:
はい、その通りです。
まずは「グループ連結の資金・税務バランス」を整えること。
その上で、将来的に医療法人化を考えても遅くありません。


Dr. S:

消費税の負担予測はいかがでしょうか?

C:

消費税については、MS法人を活用することで節税になるケースと、逆に負担が増えるケースの両方があります。以下に整理します。


【前提】

  • 医院(個人事業):保険診療は消費税非課税 → 消費税の納税義務なし or 少額

  • MS法人:課税事業者 → 消費税の納税義務あり(売上が課税対象)


【パターン別の影響】

1. 医院 → MS法人への支払い(課税取引)

支出項目消費税の扱い建物の家賃原則課税対象(※土地部分除く)医療機器のリース料課税対象事務代行・清掃・広告委託課税対象セミナー・コンサル収益(MS法人側)課税対象

→ 医院は非課税売上しかないため、これらの支払に含まれる消費税を控除できません
その分、実質的に「消費税分だけ負担が増える」ことになります。


2. MS法人側の消費税計算(原則課税事業者)

例:MS法人の収入と支出が以下の場合

項目金額(税抜)売上(賃料+リース料+セミナー)630万円支出(給与・社会保険・減価償却)500万円(非課税/不課税)消費税控除対象の経費(会計、WEB等)30万円

→ 消費税納税額(概算):

  • 売上にかかる消費税:630万 × 10% = 63万円

  • 控除できる仕入税額:30万 × 10% = 3万円

  • → 差引納税:約60万円


【まとめ:消費税負担予測】

観点内容医院(個人)今まで発生していなかった 支払消費税(例:月家賃40万×10%=4万) がコスト増MS法人課税売上が多く、仕入控除が少なければ 消費税納税額が増加グループ全体年間で数十万円〜100万円程度、消費税がトータル負担増になる可能性あり


【対策】

  • MS法人で高額設備を導入するタイミングで、還付スキームを使う
    (例:設立初期の課税事業者選択 → 初年度に設備購入 → 消費税還付)

  • MS法人の売上規模が1000万円未満の期間は「免税事業者」として扱う(2期限定)

  • MS法人の仕入(経費)にも課税仕入を増やすことで、消費税控除の割合を増やす





◆ おわりに

今回は、「個人医院+MS法人」スキームによって実現できる、税務・資金繰り・資産管理の最適化について対談形式でお届けしました。

MS法人は単なる節税ツールではなく、医院経営を“グループ全体”で設計するための強力なパートナーです。
医療法人化を見据えるかどうかも含めて、まずは今のスキームを最大限に活かすことが第一歩かもしれません。


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