歯科医院院長のブログ

医療法人の出口戦略(途中で死んだらどうしよう、、、??)

2025年05月16日 22:13

こんにちは!MBA歯科医院長∔伴走型歯科コンサルティング 下所由美子です。

前にMS法人や医療法人のブログ投稿しました


復習として医療法人のメリットデメリットを上げます。

これを踏まえて、、、

医療法人化の「落とし穴」について、さらに深堀しましょう!

~設立・解散・退職金・万が一の時まで、正しく知っておくべきこと~

開業して数年が経ち、「そろそろ医療法人化を考えるべきか?」と感じるタイミング。
節税・資産形成のメリットが強調されがちですが、実は「やってみたら大変だった」というケースも少なくありません。
本記事では、法人化を検討する際に見落とされがちな【設立・解散のハードル】【退職金】【万が一の対応】まで、具体的に解説します。


1. 医療法人の設立には「都道府県の認可」が必要

医療法人は株式会社のように自由には設立できません。
都道府県知事の認可を受けて初めて設立可能であり、書類作成・審査・面談と、数ヶ月に及ぶ準備が必要です。

また、年に1~2回しか認可受付をしていない自治体もあるため、「やりたい時にすぐ」は不可能という前提で動く必要があります。


2. 医療法人の解散=簡単にできない+残余財産は「国庫」へ

法人を閉じたいとき、個人事業なら税務署に届出するだけですが、
医療法人の解散には再び都道府県知事の認可が必要です。

さらに、法人が保有していた資産(預金・土地建物・保険など)は、原則「国庫」に帰属します。
つまり、個人のものにはなりません。

ただし、設立時に「公益法人や自治体」を残余財産の帰属先として設定しておくと、国庫以外への帰属も可能です。


3. 院長の退職金はどうなる?

医療法人は、役員である院長に対して退職金を支払うことが可能です。
この退職金は法人の損金として計上できるため、節税と資産形成を両立できる大きなメリットです。

計算方法は以下の通り:

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退職金 = 最終月額報酬 × 在任年数 × 功績倍率(通常2.0〜3.0)

ただし、税務署から「功績倍率が高すぎる」と否認されるケースもあるため、実績に応じた適正額の設計が重要です。


4. 万が一 院長が亡くなった場合は?

理事長が亡くなったとしても、医療法人は存続します。
新たな理事長を選出すれば、法人自体は継続可能です。

また、死亡退職金として遺族に支払うことも可能です。
この際の支給額は、退職金と同様に算定できます。

注意点としては、支払われた死亡退職金は「相続税の対象」となる点ですが、
「500万円 × 法定相続人の数」まで非課税枠があります。

たとえば相続人が配偶者+子2人の場合:
→ 非課税枠は 500万円 × 3人 = 1,500万円まで非課税となります。


まとめ|法人化は「始まり」ではなく「出口設計まで」

医療法人化は、節税だけでなく「退職」や「相続」、「承継」などの将来設計を含めた判断が求められます。
やる・やらないではなく、「いつ・どうやるか」を慎重に設計しましょう。


■ 医療法人の解散と「残余財産の帰属」について

✅ 前提:医療法人の残余財産は「原則」国庫帰属

  • 解散後に法人に残った財産(現預金・建物・保険など)は、医療法第57条により「国または地方公共団体に帰属させなければならない」と定められています。

  • この「帰属」とは、無償で引き渡すという意味であり、「残った資産の何割かを国に納めれば残りは受け取れる」というものではありません

✅ 結論:“全額”帰属が原則です(≠〇%で残せる)。


■ ただし例外あり:残余財産の帰属先をあらかじめ指定していればOK

設立時の「定款」において、以下のような公益性ある団体を帰属先として登録しておけば、国庫ではなくそこへ資産を渡すことができます。

例:

  • 日本赤十字社

  • 地方公共団体(県・市町村など)

  • 公益財団法人や医療系公益法人 など

👉 この設定がない場合は、自動的に国庫帰属になります。これは設立時のみ有効な設定です。


この辺詳しい人に聞きたいですね!


■ 補足:残余財産を個人(院長や家族)に帰属させることは不可

  • 医療法人の性質上、個人への財産分配は禁じられています。

  • 仮に「家族の公益法人」を設立して帰属先に…などのスキームは、税務・認可の両面から厳しく審査されます。


📌まとめ

質問内容回答解散時に残余財産が「0%取られる」のか?誤解です。全額が帰属します個人に戻すことはできる?できません。公益団体等が帰属先回避する方法は?設立時に「帰属先」を公益法人等に指定すること

【3】持分あり医療法人(旧型法人)の場合は例外的に出資者が受け取れる

  • 平成19年4月以前に設立された「持分あり医療法人」では、定款に基づき、**出資額に応じて残余財産を分配する権利(出資持分)**があります。

  • ただし、現在は新規設立不可であり、経過措置で存続している法人のみが対象です。


✔ まとめ(誤解の整理)

よくある誤解実際の内容解散したら資産はすべて国庫にとられる❌ 帰属先を定款で指定すれば、国以外の医療関連団体も可能一部は手元に戻せる(○%)❌ 個人や家族には一切分配不可(ただし旧法人除く)どの医療法人も残余財産は分配できる❌ 出資持分のある旧型法人のみ分配可能。今は新設不可


✅ 「持分なし医療法人」は残余財産を出資者に分配できない

  • 平成19年以降に設立された医療法人(いわゆる持分なし医療法人)では、
     解散時の残余財産は個人(出資者・院長等)に一切分配できません

  • 財産は、定款で指定された公益性ある団体に帰属するか、帰属先未定の場合は国庫に渡ることになります。


✅ なぜ「M&Aや事業承継を探るべき」なのか?

● 解散=資産放棄と同義になるため

  • 仮に医療法人を解散してしまうと、法人が保有していた預金や設備、保険などすべてが帰属対象になります。

  • つまり、院長個人としての資産化ができない状態で終わってしまうのです。


✅ 解決策:事業承継やM&Aで“法人を存続させる”

  • M&Aや事業承継で法人格を残すことで、以下のようなメリットがあります:

方法メリット【M&A】医療法人ごと売却し、対価を個人に得られる(譲渡益)【親族承継】息子・娘などへ引き継げば、法人の財産も活かされる【共同経営者承継】分院長などへ引継ぎ → 財産も承継され、法人の価値を社会に還元しつつ対価化


✔ 結論

「残す資産があるなら、解散よりも承継・M&Aを先に考えるべき」
→ これは事実かつ経営上の重要判断ポイントです。




▶ 次回予告:MS法人との役割分担と資産管理のベストバランスとは?

乞うご期待!!!